おじいちゃんと僕
祖父・祖母の部屋はトイレから離れている。だいたい15mから20mほど。
祖父は時々、その20mほどを歩くまでに失禁している。
ついさっき、その掃除を終えたところだ。
1年ほど前から祖父はリハビリパンツを使っている。
祖父も祖母も夜中に何度もトイレに起きる。二人ともだいたい22時から5時の間で平均4回、多くて5、6回。
5年くらい前、リハビリパンツを履く前は、トイレを行くたびに半分の確率でこぼしていた。
だから朝起きて廊下に出ると、必ず天の川のようにタラタラと沿って続いている。
1日の最初にすることは、祖父が失禁した後がないかの確認と掃除。不衛生だし臭いも残る。
数年続いたこのことは、とても家族の神経を擦りへらせた。
祖父にリハビリパンツを履くように家族が言っても、本人の抵抗が強く、なかなか履いてくれなかった。(祖父自身が家長という意識が強く、たとえ祖母の言うことでも聞き入れないことが多い)
ちゃんと履いてくれるようになるまで、1年ほどかかったと思う。
履いてくれるようになってからは、リハビリパンツ様と言いたくなるような快適な生活になった。
寝ぼけまなこで、廊下にこぼれている尿に気付かず踏んでしまうこともほぼなくなった。
朝忙しいときに時間を取られることもなくなった。
だけど今でも、2週間に一回くらい、祖父は廊下にこぼしている。
もしかして、時々こぼすのは、リハビリパンツを履くのが嫌な時があるのではないのか? と私は最近おもっている。祖父は我が強く曲がらないところがある。
以前は違ったが今は、目が悪く感覚も鈍くなっているのか、こぼしたことに気づかない。
「人間は誰しもこうなる」
頭でわかっているけど、祖父は自分自身で掃除ができない。だからせめてリハビリパンツをしっかり履いて欲しいと思って伝えている。
90歳だから、一度言っただけの普通の言葉は入っていかない。
それでも言って、めんどくさがらずに何度も伝えなければいけないと思う。